東京オリンピック2020が始まりました。
コロナ感染者数の急激な増加だけではなく、色々な問題が直前で発覚する大変な船出になりました。
その中で開会式が開かれました。
開会式は多くの人が準備を重ね当日緊張感の中、自分達の思い描いたパフォーマンスが行われるか関係者は最後まで気が抜けなかったと思います。
その中でも演じる人達のパフォーマンスをより感動的に演出する照明・映像・音響等の裏方の皆さんの連係が仕事柄とても気になりました。
1824台のドローンの演出を見た時はプログラミングが本当に大変だったのではと感じました。

過去のオリンピック開会式でも色々なサイバー攻撃があったと新聞記事等で知りオリンピックが始まる前、4年前に読んだ榎本憲男氏の「エアー2.0」を読み直しました。
読み直した理由として冒頭東京オリンピックの開会式会場基礎部分に爆薬を仕掛け爆破装置のプログラムを解除しないと爆破されると言った脅迫に警察、政府も時間がないとの理由で秘密裏に犯人の要求を受け入れる所から物語が始まる部分等、今の社会の空気と重なると感じたからです。

物語は脅迫から事件は始まりますが、その事件解決が主な内容ではなく現代の資本主義の問題点を上げながら、市場予測システムを政府が所有するビックデータと結びつけ市場予測を完璧にする事で富をもたらし新たに資本主義をやり直そうとする壮大な物語です。
改めて読んでもスピード感溢れる面白い作品でした。そこでもプログラミングは重要な役割を占め才能があると今の時代いち早く情報が得られ活用出来大きなアドバンテージを持てると感じました。

話はサイバー攻撃に戻りますが、今までのオリンピックも色々とサイバー攻撃が仕掛けられたと記録があります。
北京オリンピックでは1400万回のサイバー攻撃があったとされています。
又その後のオリンピックでも毎回サイバー攻撃の手法も変化しているようです。
ロンドンオリンピックでは北京オリンピックをはるかに超える1億6500万回のサイバー攻撃があったそうです。
その中でも開会式を妨害する為競技場照明システムの攻撃は40分間1000万回以上あったとされています。開会式の途中で落ちる事はなかったようですが、関係者間では大きな緊張が走ったと言われています。

講演会を生業とする私達も他人事ではありません。
映像・照明・音響等殆ど全ての展開は事前にプログラムされて準備しますので、このプログラムが攻撃されたらと思うとぞっとします。

榎本憲男氏の「エアー2.0」の後「DASPA国家防衛安全保障会議 吉良大介」を続けて読みました。
この本にも現在のサイバーテロ対策を如何に考えるかが物語の中にあります。
驚いたのは一般企業でも個人でも悪意あるハッカーに攻撃されたら守りようがない状況であるという事です。今では外と繋がるインターネットと切り離されているシステムでも物理的な接点を経由する事なく感染させてしまうそうです。
そのハッキング方法はナイトスタンドと呼ばれ既に実用化されていると書いてあります。
コンピューターとアタッシュケース程の大きさの発信機さえあれば、ドローンに載せて上空からハッキング出来るとの事です。
つまりいくら接点を持たないように注意してもハッキングされてしまう・・・

本には国家防衛の現段階では技術的にはサイバー戦争とは攻撃より防御のほうがはるかに難しいとあります。であれば攻撃されないようにすることが肝心ですが、それには破壊力のあるマルウェアを先に仕込んでおくことが均衡を保ち平和が実現されると書かれていました。物騒な世の中です。

今回も「東京オリンピック開催に伴うサイバー攻撃の被害報告」という名前がついたファイルを開くと、パソコンの中のデータを消去する不正なプログラム=マルウェアが見つかったそうです。東京大会のセキュリティ対策をかく乱する狙いで作成された可能性があると注意を呼び掛けているそうです。

当たり前の事ですが注意しながらメールを扱い、どんなタイトルでも簡単には添付ファイルは開かない、過去のどう使われたか分からないUSBメモリーは使用しない等の基本的な行動を皆で確認する事しか今は出来ませんが、サイバー空間の現状を知っておくことは大切な事と感じました。

金子 孝一