2週続けて法則を取上げましたが、自分の日常と重ね合わせ少しでも戒めになればと考え、時々思い出すようにしています。
今回は法則から変化している現状を改めて考えさせられた本がありました。

ユダヤの教え(78:22の法則)の大切な要素は78:22で成り立っているという考え方です。

1 人の体を構成している割合は水分78%に対しそれ以外の物質が22%
2 呼吸では肺呼吸が78%に対し皮膚呼吸が22%
3 健康なひとの腸にいる菌の割合 善玉菌78%に対し悪玉菌が22%
4 地球の海と陸地の割合は海78%に対し陸地22%
5 空気中の成分の割合も窒素が78%に対し酸素が22%

挙げたら色々あるようですが、このユダヤの教えがビジネスでも応用されています。
パレートの法則(80:20)の元になっているのが78:22だそうです。

しかし今回はビジネスではなく、先日読んだ本からこの4・5にある自然界への黄金比率を現代人が大きく崩しているのでは?と感じた事を書かせて頂きます。

「人新世の「資本論」」斎藤幸平著で衝撃を受けました。
本の冒頭では温暖化対策としてエコバックやハイブリット・電気自動車にしたなどの善意は逆に有害でもあると衝撃的な発言から始まります。
その背景となる現象を挙げています。
菅総理が2050年までに国際公約で温室ガスの排出量を実質ゼロとする目標を示しました。

しかし気候危機は2050年あたりから始まるのではなく危機は既に始まっている。毎年異常気象が世界中で起きてポイント・オブ・ノーリターンは直ぐそこに迫ってきていると。
私たちのエコと思っている活動が実は遠く離れた所で逆に多くの災害の原因を作っていると、その一部を紹介します。

私達の生活に馴染んだファスト・ファッションの話です。
■洋服を作っているのは、劣悪な条件で働くバングラデシュの労働者で2013年には5つの縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊し1000人以上の命が犠牲になりました。
■バングラデシュで生産される服の原料である綿花を栽培しているのは40℃の酷暑の中で作業を行うインドの貧しい農民である。
■ファッション業界からの需要増大で遺伝子組み換えの綿花が大規模に導入されている。その結果自家採取の種子が失われ、農民は遺伝子組み換え品種の種子と化学肥料、除草剤を毎年購入しなくてはならなく干ばつや熱波のせいで不作となれば、農民は借金を抱え自殺に追い込まれることも少なくない。

日本人の食生活の影の主役になっているパーム油は価格が安く酸化しにくい為加工食品お菓子、あるいはファストフードなどでよく使われている。
■このパーム油の生産は主にインドネシアやマレーシアである。パーム油の原料となるアブラヤシの栽培面積は今世紀に入って倍増しており熱帯雨林の乱開発による森林崩壊が急速に進んでいる。

電気自動車がガソリン自動車に置き換えるなら二酸化炭素の排出量を減少させることが出来ると考えるが、そう問題は簡単ではない。
2019年に吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞したリチウムイオン電池がスマホ・ノートPCだけではなく電気自動車にも不可欠である。このリチウムイオン電池の製造には様々なレアメタルが必要となる。

リチウムの多くはチリのアンデス山脈沿いのアタカマ塩原が最大の産出国。
■リチウムは乾燥した地域で長い時間をかけて地下水として濃縮され、塩湖の地下からリチウムを含んだ鹹水(かんすい)を汲み上げ、その水を蒸発させることで、リチウムが採取される。つまりリチウム採取は地下水の吸い上げと同義である。問題なのはその量で一社だけでも1秒あたり1700リットルもの地下水を汲み上げている。
地域の生態系に大きな影響を与えており、鹹水に生息しているエビを餌にしているフラミンゴの個体数が減少していている。急激な地下水のくみ上げによって住民のアクセスできる淡水量も減少。

コバルトもリチウムイオン電池に不可欠。
コバルトの約6割がコンゴ民主共和国、アフリカでも最も貧しく、政治的・社会的にも不安定な国で採掘されている。
■コバルトの採掘方法は地層に埋まっているコバルトを重機や人力で掘り起こす単純なものである。劣悪な労働条件で奴隷労働や児童労働が蔓延し、その中には6歳から7歳程度の子供もおり、一日わずか1ドルほどという。
■危険なトンネルでの作業地下で有害物質を吸い込みながら過ごす作業は呼吸器・心臓・精神疾患と言った健康被害も引き起こしている。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは15歳の高校生の時、大人たちの気候変動対策の偽善をえぐり出し、政治家が人気取りのために「環境に優しい恒久的な経済成長しか語らない」と厳しく批判した。グレタの主張は資本主義が経済成長を優先する限りは気候変動を解決出来ないというものである。
グローバル・サウスの地域や社会集団から収奪し、さらに私たちの豊かな生活の代償を押し付けている構造が存在している。このような収奪や代償の転嫁なしには、帝国的生活様式は維持出来ないという。
著者はこのような具体的な例を挙げ、持論を展開している。

直面している環境問題を経済・社会問題と重ね如何に考え、今後どのような方向で対策すべきかを書いていますが、それは興味があったら是非お読み頂きたいと思います。

ただ日常の生活を支えてくれているのは私達の目に見えない場所での犠牲がある事を認知し、小さな積み重ねでも節電や無駄を排除する意識を持たなくてはと感じました。
自己抑制そして常に想像力を働かせ考えなくては!と痛感した本でした。

金子 孝一