3月17日の朝日新聞の天声人語に昭和の教科書に書かれた歴史事項も今では研究が進み「定説」が覆っているとありました。
例えば新旧の教科書を読み比べると、最古の銭貨は和同開珎ではなく「富本銭」に。又「いいくに」と暗記した鎌倉幕府設立の時期も1192年より早かったとみる記述が増えているとの事です。
この記事を読んで思い出したのが3年前に出版され世界で話題になった「FACTFULNESS」です。著者はスウェーデンの医学者・教育学者のハンス・ロスリング氏です。
帯のキャッチはあなたの常識は20年前で止まっている!?
ビル・ゲイツが大絶賛、大卒の希望者全員にプレゼントまでした名著と、ここまで書いてあるとミーハーな私は当時直ぐに読みました。
冒頭から世界の事実に関するクイズ13問から始まります。
例えば
世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
いくらかでも電気が使える人は世界にどのくらいいる?
と全問3つの選択肢から選びます。その選択肢がいずれもありそうな回答なのです。
そのクイズの後には国別正解率がグラフで紹介されています。
チンパンジーが3つの回答の選択肢の前に置かれたバナナを先に選んだ方が回答という事で確立を取ると33%近くになる。となると人間の正解率の方が低いと面白いエピソードを交え話は進みます。
人間はよりドラマチックな方を選ぶ傾向がみられ、世界はよりも怖く暴力的で残酷だと考えられていると
知識不足を明るみに出すだけではなく、その根っこにある原因を探ろうとしています。
そこで彼が気づいたのは何も知らずクイズに臨めばチンパンジーと同じ点数になるはず、では何故それ以下の点数なのか?間違った知識を身につけていて、情報のアップデートがされていないからだと。
それぞれが学校に通っていた時の知識が、そっくりそのまま引き継がれ情報アップデート不足を指摘しながら、より深く洞察し人は何故世界を悲観的に見てしまうのか?メディアのせいなのか?等研究を進めました。
その結果ドラマチック過ぎる世界の見方は人間の脳の機能にあるとの事を導き出しました。
そこから脳の機能について具体例を各章で示しています。
著者の目的は事実に基づいて世界を見てもらいたいとの思いです。
そこでファクトフルネスの大まかな10のルールを記載しています。
1:分断本能を抑えるには・・・
2:ネガティブ本能を抑えるには・・・
3:直線本能を抑えるには・・・
4:恐怖本能を抑えるには・・・
5:過大視本能を抑えるには・・・
6:パターン化本能を抑えるには
7:宿命本能を抑えるには・・・
8:単純本能を抑えるには・・・
9:犯人捜しの本能を抑えるには・・・
10:焦り本能を抑えるには・・・
本の構成は上記の目次で展開され・・・の後は事例を挙げ彼が考えるあるべき姿の方向性を示しています。
朝日新聞の記事から3年前の本を思い出し、今一度読み返し改めて忘れていることが多い事に気づき私自身10の大まかなルールを日常で意識しなくてはと改めて感じました。
何かの小説の一説に
人の上に立つものは、自分の経験からくる判断を過信してはならない。
むしろ経験の7割から8割は間違っていると考える。
この本質は情報アップデートと繋がっているのかなと感じました。
金子 孝一