ゴールデンウイーク前に緊急事態宣言が再び東京・大阪・京都・兵庫に出されました。
5月11日までとの事でしたが、延長され5月一杯までとなりました。
又愛知・福岡も対象地域となります。
コロナ禍で飲食店及び関連企業が大打撃を被っています。
勿論私達の仕事も現在Web講演会で凌いでいますが、やはりハイブリット・リアルが復活しないと今までお世話になった協力会社の人達との仕事も戻りません。
非常に厳しい状況は続いています。

私も現在テレワーク中心の生活で赤坂にある会社のオフィスに行くのは一週間に一回か二週間に一回のペースになりますが、通るたびに街の景色が変わっています。
馴染みのある飲食店も閉店になりテナント募集の紙が貼ってありました。

食通の作家で私が思いつくのは川端康成さん、三島由紀夫さん、向田邦子さん、池波正太郎さん、開高健さんです。その他多くの食通の有名作家の方はいて、夫々にお気に入りの名店があり小説の中で食やお店等紹介している一説が出てきたりしています。
もしその作家の皆さんが今生きていたら、どのようなコメントや行動でお店を応援するのだろうと想像します。
コロナが収束した時には是非そのような方々が支持したお店巡りをしたいので、何とかこの時期を乗り越え営業を続けていることを願うばかりです。

私の好きな作家 原紘一さんは本のタイトルが非常に面白く奇抜ですが、食に関する作品も多く「ヤッさん」シリーズ、「握る男」「佳代のキッチン」シリーズ等多くの飲食ビジネスに関した作品を出され、食に興味がある私は大変勉強になります。

彼の作品「星をつける女」では、飲食ビジネスに投資したり買収したりしている個人投資家や機関投資家に向けて対象のメニューや味、品質は勿論サービス・店舗オペレーションさらには経営倫理に至るまで調べ上げて格付けを評価する仕事で、グルメ評論家・市場調査員・信用調査を兼ねた仕事をしている女性が主人公です。

主人公がどんな状況でも妥協せず常にブレのない価値基準を持ち続けていく姿が描かれています。
主人公が会社設立間もない頃あるレストランチェーンに巨額な投資を考えていた投資家から調査依頼がありました。市場調査・企業経営に詳しい調査員は数多くいますが、料理評論家なみの繊細な舌と知識まで備えた人材は多くなく彼女の経歴と知識が大いに活かせる仕事で高級レストランの肉の火入れ加減まで確認するシーンがあります。
フランスのブルゴーニュ地方シャロレー地区で育てられたシャロレー牛で白毛の牛は最近ではアメリカやオーストラリアでも育てられていますがフランス産でもブルゴーニュ地方シャロレー地区で育てられたものは更に高級で値段が跳ね上がります。

味覚とは磨き上げるもの。毎日真剣に味わい続けて初めて舌から脳に記憶される。
と書いてありましたが、読みながら私の亡くなった祖母も調理が大好きで、一緒に外食すると料理を楽しむと言うより、難しい顔をして一品ずつ料理の味を確かめるような食べ方をするので思わず私は「おばあちゃん、もっと美味しそうな顔をして食べてよー」と声をかけると、笑顔で「そうだねー」と返事する祖母の顔を思い出しました。

主人公はシャロレー牛でもブルゴーニュ産かどうかの違いが分かります。
やはり一円でも仕事として収入を得るという事はプロフェッショナルとしての質が担保されなければ得られないと痛感しました。

先日も経済小説を読んでいてビジネスパートナーにプレゼントするシーンがありました。
チョコレートでしたが、私も聞いたことがないお店だったので、直ぐに検索したらありました。値段がリーズナブルだったので思わずクリックして購入してしまいました。
きっと本来のグルメと言われる方は、そのお店まで遠くとも電車やバスを乗り継ぎお店の雰囲気を楽しみオーナーの拘りを理解し購入するのがあるべき姿と感じるのでしょうね。
私みたいにクリック一つで購入してしまうのは邪道と一喝されそうです。

本物に触れる・味わう事はとても大切ですと、シルクロードの研究をしていた叔父から若い頃子育ての時に言われました。
子供だから分からないだろうと言う事ではなく、子供だからこそ先入観なく本物しか味わえない絵心や味の深みを自然体で感じる事が出来る日常があれば、大人になった時に大きな場に出ても委縮せず自然体で臨めますよと・・・
しかし今コロナ禍で直接お店や施設へ行くことが難しい中で本物に触れる機会が減少している事が本当に残念です。

昔コーヒーのCMでダバダとBGMにのせて著名人がコーヒーを飲むシーンに最後のコメントで「違いが分かる男」とありましたが、テレビ番組で著名芸能人が本物をあてる「芸能人格付けチェック」で外しまくる私は残念ながら本物とは程遠いです。
叔父さん すみません。

金子 孝一