IRを担当する内閣府の副大臣だった衆議院議員が収賄罪と証人買収罪の罪で問われている事件が先日久しぶりにニュースで報道され以前読んだ作家 楡修平さんの作品「東京カジノパラダイス」に書かれた内容を思い出しました。

IRの定義はカジノ施設の他劇場・国際会議場・展示会場等MICE施設、ショッピングモール等が集まった複合的な施設の事と書かれています。
私たちも仕事で講演会・会議運営を職業としている関係で無関心ではいられませんが、何より世間の一番の注目はカジノ施設です。今までは日本にはカジノ施設はありません。
政府でもIR統合型リゾートの法案を提出し2018年4月には「IR実施法案」が閣議決定し7月には設立され話題になりました。その時日本の3か所限定で開設される事を盛り込んだ「特定複合観光施設区域整備法案」が設立し、準備が着々と進んでいるようです。
今はコロナ禍で報道が減少していますが、水面下では各自治体等の綱引きがあるのでしょう。再び何処に施設を決めるか等決定する段階で話題になるのでしょう。

小説の内容はお台場にカジノ施設を作り、運営をアメリカのカジノ運営会社が行うので準備からオープンに至る経緯を元商社マンでカジノ運営会社に転職した主人公を色々な角度からユーモラスに描いています。
しかし小説の最後に解説がありますが、書いている方がこの小説はストレートな社会小説よりも毒性の強い告発小説ではないかとまで書いていました。

小説(平成30年9月発行なので書かれた数字はそれ以前のデータからでしょう)では日本がカジノ誘致に熱を上げ始めたのが、アメリカ投資銀行のレポートを日本の政治家が頭から信じ、お台場カジノに落ちるカネは一兆五千億。経済波及効果七兆七千億との数字から動き出します。
こんな数字がどこから出てきたか?
パチンコ市場規模からで
日本には1,300万人(パチンコ・パチスロプレイヤー調査2020年は一年に一回以上の遊戯人口は1,021万人)のパチンコ人口があって、一人が年に23万負けている。
日本にカジノが出来れば、その半分が押しかけて来て、一人が17万使う。
想定している客の7割から8割が日本人で試算。
パチンコ店は日本全国にあるから、行くのでそれだけの人数を考えると交通費・宿泊費とプラスになるのでとても現実的な数字ではない。
このカジノ法案ですが、試算は前提条件でいくらでも変わる。投資銀行や官庁が提出してきた試算は希望的観測に基づいた夢物語と書かれています。

民間企業であれば、大きな投資に対する失敗は倒産に繋がるリスクとなりますが公共であれば失敗は国民の税金負担が増える結果で終わってしまい、責任を取る人はいません。

本を読んで、現在ギャンブルの還元率や管轄庁を調べてみると驚きました。
還元率とは平均して1回に得られる利益率ですから、残りは全て胴元(運営側)が儲かる仕組みです。

パチンコ・パチスロ 還元率80%から85%  管轄庁 警察庁
競馬        還元率70%から80%  管轄庁 農林水産省
ボートレース    還元率75%       管轄庁 国土交通省
競輪        還元率75%       管轄庁 経済産業省
オートレース    還元率70%       管轄庁 経済産業省
宝くじ       還元率46%       管轄庁 総務省

皆さんはご存知でしたか?

この管轄庁を見ても、夫々が違う省が担当して、各団体は独占企業なので利益が出る仕組みになっています。
又その下には関連団体が多くぶら下がっています。その数も驚く数です。
きっとカジノが出来れば管轄する庁のもと団体が出来、その下にも関連団体が出来るのでしょう。
この団体・関連団体が官僚の天下りや議員の受け皿となるのでしょうか?

本を読みながら、こんな事実が分かるとIRが本当に必要なのか?
コロナが今後の経済・社会に大きな影響を与え世界を変えた今、以前のような世界には戻れないと考えるのであれば、税金の使い方や地方の在り方も含め全て今一度考え直す時期に来ているのではないでしょうか?

コロナ禍でパチンコ人口は減少したものの、公営ギャンブルの売り上げが伸びているそうです。
直接会場に行かなくてもネットで簡単に購入でき家にいて楽しめる娯楽の一つとなっているようです。コロナにより日々の生活にも厳しさを増す人たちが増えている中で皮肉な状況です。

スケールの大きなカジノギャンブルから一転小さな小さな懸賞のお話です。
先日コンビニで氷菓子ガリガリ君を買いました。
食べ終わったら棒に「1本当たり」との表示があり驚きました。
ガリガリ君にもこんな懸賞があるのを知りませんでした。
当たってガリガリ君の当たり確率を調べて見ましたら、製造会社からは公表されていませんでした。しかし一説によると当たりの確率は3.2%とあります。
その根拠がガリガリ君は1箱32本入りで卸売りされているので、その中の1本が入っていると3.2%との事です。
景表法(正式には不当景品類及び不当表示防止法)と言って誇大広告や過剰な景品提供による商品販売を制限する事で「本来の商品販売の質の低下を防ごう」と言う法律がありました。知りませんでした。
このような懸賞には当たりの総額は売上予定数の2%になっています。
そうなると3.2%は法律上限を上回った数字ですから、果たしてどの数字が正しいのか分かりません。
しかし当たりの棒を見た瞬間は何か小さな喜びを感じました。
この感覚がギャンブルへと通じる?
気を付けなくては!

私も人から何かギャンブルはされますか?と聞かれますが、自分自身の人生がギャンブルなので、これ以上は必要ありませんと答えています。

金子 孝一