東京オリンピック・パラリンピックの開催が近くなり、選手団の到着が先日から始まりました。
先日、ウガンダ選手団から2名の陽性者がとの報道がありましたが、その後の対応に驚き、発表される組織委員会のコメントに唖然とするばかりでした。
あれだけ安心・安全の大会を目指しますと同じコメントを繰り返していたのにもかかわらず、その体制が穴だらけの曖昧な内容であったとは誰もが驚愕するばかりです。

私達の仕事も講演会の運営ですから、やり直すことが出来ません。
つまり講演会当日の本番一発勝負になります。
だからこそ、あらゆる場面を想定して、事前準備段階から弊社スタッフだけではなく各協力会社の皆さんと目的・プロセス・当日の体制を共有出来るよう、しっかりとコミュニケーションを取ります。資料は図解し皆が理解しやすくする等の工夫をします。

その際に一番大切な事はシミュレーションです。
以前ブログの講演会のチェックポイントでも書きましたが、シナリオ通り順調に進む事だけを考えず、逆にそうではない事が起きるのが当たり前と考え、多様なシミュレーションし、いくつかの手順を当日お手伝い頂くスタッフの皆さんと問題意識を共有します。
当日のお手伝い頂くスタッフの人数も講演会規模によって変わりますが、大規模の場合100名以上のスタッフがそれぞれの専門の立場で役割を果たします。
その多くのスタッフの方達が、何度も色々な場面を各所で想定し、リハーサルを繰り返し、次第に自分たちの手順にも慣れ、本当に緊急事態が起こった場合でも落ち着いて違うシナリオに切り替えプロとしてのパフォーマンスが発揮出来るようになります。

理想のシナリオ通り進行できるのがベストですが、その通りにいかない場合の対応力が何より大切と考えています。だからこそ多様な場面のシミュレーションをして講演会として成り立つ形に持っていかなくてはいけません。
順調にシナリオ通り進行した場合は全ての満足度を達成できますが、しかし機材や設備が全てリハーサル通り動いてくれるとは限りません。

映像・照明・音響・Web配信等を結ぶケーブルは何十本何百本と繋がっています。そのシステムがリハーサルでは順調でも、本番になるとちょっとした電圧の変化で動作がスムーズでなくなったり、回線状態が不安定になったりと本当に多くの現象が起きます。
だからこそバックアップ体制が重要なのです。
そのバックアップ体制を機能させるのが、事前の多様なシミュレーションと当日リハーサルの繰り返しなのです。

運営に関わる大勢のスタッフがデータの変更やコメントシーンの変更等を明確に理解し把握しているか、スタッフ間のコミュニケーションも重要です。
一人に変更を伝えるのではなく、関わる全てのスタッフには情報を共有しないとなりません。それも早く正確に伝わり確認出来る体制作りがなくては緊急事態に対応出来ません。
その場合、目標を変更し、演出の全てが出来なくとも最低限の講演会としての目的を果たせるよう対応します。

今回の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の対応を聞くと、どの位のシミュレーションをしているのか?
そしてシミュレーションに合わせ現場でどの位リハーサルが繰り返されているのか?
空港から開催会場までのスタッフ間の情報伝達システムがどうなっているのか?
シナリオ通りいかない場合としてのバックアップ体制はどのようにスタッフ間で共有しているのか?等
不明な点が多すぎます。

民間の私達が仕事として同じような対応していたら企業は存続出来ません。

このような事を書きながら経済小説家 城山三郎氏の本の一説に

「やれたかも知れぬことと、やりぬいたこととの間には、実は決定的な開きがある」

こんな言葉を思い出しました。

人は思った通り動かず勘違い、誤解もある事を前提に、多様なシミュレーションをして、それに合わせバックアップを用意し、リハーサルを繰返します。
そして緊急事態に慌てずお手伝い頂くスタッフの方達と共有していく事が大切な要素ですが今回の発表される組織委員会の内容には疑問ばかりが残されます。

今この日本は何処へ向かおうとしているのでしょうか?

金子 孝一