デンマークのヘルシンオア(Helsingør)からローカル電車で15分位の場所にあるホテルペンション「ソウルバッケン」で一カ月間仕事をする経緯を前回のブログで書かせて頂きました。
今回は滞在中の生活やエピソードを書かせて頂きます。
まずお手伝いするにあたり、目標は帰国の際にご夫婦が再び私と会いたいと思って貰えるようにしたいと考えました。
それで仕事をする上でこれだけは守ろうと思った事が4つありました。
1:依頼された内容を何時までに終えると期待して頼んでいるのか?
2:依頼された事で気が付いた事はどんな事でも遠慮なく伝える
3:期待している終了時間より常に早く確実に終え、先に「次は何」と自分から聞く
4:いつも楽しそうに仕事をしているようにしよう
1~4の理由は私なりにありました。
1はホテルの仕事が初めての私にご夫婦は頼んだ仕事をどの位の時間軸で考えて頼んでいるのか?理解する事で自分の目標時間も明確になり期待とのギャップを作らず済みます。
2は文化・伝統・人種が違う中でどのような優先順位で価値観を持っているのか分かりませんでした。私が気付く色々な事を伝える事によって、彼らの反応から何が大切で何が気にしていないのかが理解出来るのではと考えました。
3は自ら積極的に仕事に取り組む姿勢を理解してもらう事で新しい仕事を手伝えるチャンスが出来るのではと考えました。その結果ご夫婦からは私がいつも「次は?次は?」と声をかけるので「Next Man」と笑って呼ばれるようになりました。
4は言葉のギャップがある中でも私の振る舞いが楽しそうであればお客さんやご夫婦にも声をかけられやすくなると考えていました。結果滞在中本当に宿泊されたお客さんにも可愛がってもらいました。
そんな4つの自分なりの決め事を意識し「ソウルバッケン」での生活が始まりました。
そこではベットメイクから掃除、食事作りまで何でもお手伝いしました。
私は料理も好きでしたのでお昼には時々簡単な日本食をご夫婦に作ったりもして喜んで貰いました。
ある時に夕食用に奥様のリリーさんがゆで卵をナイフで切ってサラダの上に飾っていたのですが、私が壁に出ていた釘の先端に糸を結びゆで卵を波のようにカットし飾りました。
ここのホテルから海が見えるので波がコンセプトで波型にカットしたと説明したら本当に喜んでくれました。その後夕食に出す多くのプレートの一つを私が担当するようになりました。
ここのスタイルはご夫婦や手伝っている私でもテーブルは違っていましたがお客さんと一緒の場所で同じ食事を取る事でした。
初め私はそのスタイルに驚きましたが、お客さんとも和気あいあいで楽しかったです。お酒が弱い私でしたがワインも毎食勧められ白ワインが飲めるようになりました。
その時一緒に働いていたのが、ポーランドから夏休みに手伝いに来ていた女子大学生二人でした。
しかし当時ワルシャワ体制のポーランドでは英語を一般人は学ぶ事は出来ずドイツ語が第二外国語だったようで、私はドイツ語全く出来ませんでしたから、意思疎通が難しく一緒の仕事をするのに大変でした。
ジェスチャーで一所懸命伝え何とか仕事をやり、彼女たちの帰国時には是非ポーランドにも遊びに来てくれとハグして別れました。
1週間位一緒でしたが、その後は私一人。その方が気楽だったかもしれません。笑
お休みの日にはヘルシンオア(Helsingør)の街までリリーさんと出かけ、靴を買ってもらったりカフェでケーキをご馳走になったりとても楽しい時間を過ごしました。
滞在中知りましたが、ヘルシンオアにはクロンボー城という立派なお城がありました。
実はシェークスピアのハムレットの舞台になったお城です。
私はてっきりシェークスピアですからハムレットの舞台はイギリスと思い込んでいましたが、デンマークだったのです。思い込みは良くないですね。
朝7時前後には奥様のリリーさんと一緒に近くのベーカリーにホテルで出す焼きたてのパンを買いにいきます。行くときにはリリーさんが私と腕を組んで歩くので、よくニルスさんが見たら嫉妬するよと笑いながら話ました。
「ラースムース」と言うゴールデン・レトリバー犬をご夫婦が飼っていて彼の居場所がキッチンだったのです。
とても穏やかで賢くキッチンが忙しいと自分の体の大きさが分かっていて、邪魔にならないよう静かにキッチンの隅に移動し上目遣いで皆を見ていました。
そんな生活にも慣れルーティンの仕事も出来るようになりましたが、そこで大変な失敗をやらかしました。それも一度ではなく二度もです。
普通でしたら「クビだー」と一喝されています。
次回はそのお話を書かせて頂きます。
金子 孝一